2018.09.26コラム

WeChat - 中国最大規模のチャットアプリ

目次:

  1. WeChatとは
  2. 利用状況
  3. 主な機能
    1. 朋友圈(モーメンツ)
    2. WeChat Pay(モバイル決済機能)
    3. お年玉機能
    4. Mini program(ミニプログラム)
  4. WeChat IDについて
  5. 今後の展開について

1. WeChatとは

WeChat(中国名:微信/ウェイシン)は、中国大手IT企業Tencent(テンセント)が2011年にリリースした、文字・音声・写真・動画・顔のスタンプなどを使って会話を行うことができる無料チャットアプリです。最近は、チャット機能だけでなく、振り込み、くじ付きのお年玉、タクシー配車、電車や映画のチケット手配、買い物、モバイル決済など、多岐にわたる機能も付されています。

中国では、海外のウェブサービスの利用に規制があるため、グーグル、Facebook、TwitterやLINEなどは使うことができません。そのため、近年、WeChatやWeibo(中国名:微博/ウェイボー)といった、中国独自のウェブサービスやアプリが急速な発展を遂げています。

wechat logo

2. 利用状況

2018年にTencentが公開した第一四半期の業績報告書によると、WeChatの月間アクティブユーザー数(利用者の延べ人数)は、2018年3月時点で10.4億に達し、前年同期比で10.9%増加しました。中国互联网络信息中心(CNNIC)の第41回中国インターネット発展情報統計によると、2017年12月末時点の、中国インターネット利用者は7.72億人で、インターネット普及率は55.8%に達しています。この中で、モバイルインターネット利用者は7.53億人で、インターネット利用者全体に占める割合は前年末の95.1%から97.5%に上昇しています。また、ほぼすべての中国モバイルインターネット利用者はWeChatを利用しています。

2016年度の平均利用時間調査では、一日に4時間以上WeChatを利用する人はユーザー全体の34.6%を占め、2時間以上4時間未満で利用する人も18.4%となっています。つまり、ユーザーの半数以上が、一日平均2時間以上WeChatを利用していることになります。(参考資料:『2016年微信经济社会影响力研究报告』(2016年WeChat経済社会影響力研究報告))。
また、Tencent傘下のPenguin Intelligence社が行ったアンケート調査結果によると、80%以上の回答者は、仕事のためにWeChatを使ったことがあると回答しています。さらに、約6割の回答者は、WeChatに登録している友達の大半は、仕事上の知り合いだと答えています。つまり、WeChatはビジネスシーンにおいても、すでに重要なコンタクトツールとして機能していることになります。

3. 主な機能

WeChatは、2011年にリリースされた当初は、純粋なコミュニケーションアプリでしたが、その後、モーメンツ、モバイル決済、オンラインショップ、シェイクやミニプログラムといった、コミュニケーションツール以外の機能が、多岐にわたって追加されました。以下、主要な機能を紹介します。

参考資料:

『2016年微信经济社会影响力研究报告』(2016年WeChat経済社会影響力研究報告),CAICT(中国信息通信研究院産業と企劃研究所)

『2017年微信经济社会影响力研究报告』(2017年WeChat経済社会影響力研究報告),CAICT

『第41次中国互联网络发展状况统计报告』(第41回中国インターネット発展情報統計、英語:The 41th China Statistical Report on Internet Development)、中国インターネット情報センター

『2017年微信用户&生态研究报告』(2017年WeChatユーザー&生態研究報告),企鹅智酷(Penguin Intelligence)

『2016年度インターネット上の知財保護に関する調査報告書』,日本貿易振興機構北京事務所

WeChatの使い方~中国マーケティングで押さえておきたいWeChatの使い方|中国マーケティング情報サイト

http://china-marketing.jp/article/detail08/

即速应用:2018年小程序生态进化报告 | 互联网数据资讯中心-199IT | 中文互联网数据研究资讯中心-199IT

http://www.199it.com/archives/750286.html

微信(WeChat)のミニプログラムとは?その重要性は? - カタパルトスープレックス

http://www.catapultsuplex.com/entry/wechat-mini-programs-explained

3-1. 朋友圈(モーメンツ)

wechat moments
wechat moments

モーメンツとは、LINEの「タイムライン」やFacebook、Twitterのように、通常タイムラインの形で共有範囲が設定でき、文章・写真(一回の投稿に9枚まで)・リンク・ビデオ(10秒以下)が自由に投稿できる機能です。投稿には、コメントを付けることができ、それに対して返信することもできます。
投稿したものは、基本的にWeChat上で登録されている友達全てにシェアされますが、設定により、特定の人物のアクセスをブロックすることや、投稿を非表示とすることも可能です。そして、自分の投稿を共有できる期間についても、当日、三日間、半年間というように、一定の期間内でしかシェアできないように設定することが可能です。また、許可された人しか投稿を見ることができない、10回分しか見ることができない、という設定もできます。

3-2. WeChat Pay(モバイル決済機能)

WeChatPayというモバイル決済機能はTencentが2013年にリリースしたサービスです。ユーザーはWeChatにおいて、自身の銀行口座を登録した後、送金、買い物、公共料金の支払い、タクシー料金の支払い、電車やイベント、映画館のチケットの購入など、様々な場面でWeChat Payを利用することができます。

wechat pay
wechat pay

2016年のデータによれば、WeChatの決済サービスの月間アクティブユーザーは、約2億人となっています。同年度の中国の大手IT企業アリババグループの提供するAlipay(アリペイ)のユーザー数4億5000万人と比較すれば、WeChat決済サービスの利用者はそれほど多いとは言えません。しかしながら、WeChat自体のユーザー数は今年に入り10億人を超え急激に増加しているため、これに伴い今後は決済サービスの利用者もさらに増加する可能性があります。

3-3. お年玉機能

2014年中国の旧正月(春節)に、WeChat(中国国内版)はお年玉機能をリリースしました。ユーザーは実名登録した後、お年玉機能が利用できるようになります。お年玉の金額には上限があり、一回につき200元を超えることができません。

wechatpay nygift
wechatpay nygift

特徴的なのは、個人ではなく自分が所属するグループにお年玉を送る機能があることです。その際、グループのメンバーに均等に配ることもできますが、総額を決めたうえでランダムに配分するというオプションもあります。ランダムの場合は、誰がいくらお年玉を手にするかの振り分けは自動的になされます。つまりゲーム感覚でお年玉を送ることができるのです。ただし、送る回数や金額には制限があります。また、現段階では、海外ユーザーが使う国際版WeChatでは、お年玉機能は使えません。

3-4. Mini program

Mini program(中国名:小程序,和訳:ミニプログラム)とは、WeChatが2017年1月9日にリリースしたWeChat内で利用できるアプリの総称です。通常、iOSまたはAndroidシステムを利用しているスマホであれば、アプリを使用するためには、まず先にアプリストアからのダンロードもしくはインストールが必要となりますが、mini programはWeChatに組み込まれているため、新たにインストールする必要がありません。 そのため、時間やスマホ容量などの制限を受けずに、使いたい時に使いたいだけ利用できるというメリットがあります。

wechat miniprogram
wechat miniprogram

実際に、2017年12月に初めてスマホゲームがミニプログラムとしてリリースされて以降、ミニプログラムのユーザー数は急激に増加しました。具体的数値を挙げると、2018年6月までに、ユーザー数は6億人を突破し、ミニプログラムの総数も100万を突破しています。プログラムの内容は、Eコマース、ゲーム、飲食、公共サービスなど多岐にわたっています。

4. WeChat IDについて

WeChat IDは、大きく分けると、個人アカウントと公式アカウント(中国名:公衆号)の二種類に分類されます。更に、公式アカウントは、購読アカウント(中国名:訂閲号)、サービスアカウント(中国名:服務号)、企業アカウント(中国名:企業号)、ミニプログラムアカウント(小程序)に分けられています。各アカウントは登録者、利用目的及び発信対象などが異なります。

wechat id
個人 購読 サービス 企業 ミニプログラム
登録者 個人 個人/法人 法人 法人 個人/法人
発信対象 友人 購読者 フォロー者 法人 全体
利用目的 コミュニケーション 情報伝播 サービス提供 生産運営管理 プログラム提供

また、個人アカウントは自由に登録できますが、公式アカウントを登録する際には、身分証明証や企業の営業許可証の提示、申請費用の請求などがあります。

5. 今後の展開について

膨大な人口を抱える中国において、昨今のインターネットの普及スピードは、目を見張るものがあります。そのような中、2011年にリリースされWeChatは、7年間でユーザー数が10億人を突破するという急速な成長を遂げてきましたが、今後はこれまで同様のユーザー数の急激な増加は難しいと考えられます。しかしながら、WeChat PayやMini Programといった、後に追加された新たな機能によって、WeChatが更に人々の生活に密着したものとなっていくことが予測されます。